アメリカには日本のような国民皆保険制度がなく、医療費は世界でも突出して高額です。無保険のまま救急搬送されれば、1回の入院で日本の年収を超える請求が来ることも珍しくありません。この記事ではKFF(カイザー・ファミリー財団)やCMS(連邦メディケア・メディケイドサービスセンター)など公的機関のデータをもとに、無保険者率・医療費の実態・日本との違いを整理します。
無保険者率9.8%・約2,670万人。公的医療保険がないアメリカで、渡航・赴任前に知っておきたい医療費と保険の基礎知識をKFF・CMS公式データで解説します。
アメリカには日本のような国民皆保険制度がなく、医療費は世界でも突出して高額です。無保険のまま救急搬送されれば、1回の入院で日本の年収を超える請求が来ることも珍しくありません。この記事ではKFF(カイザー・ファミリー財団)やCMS(連邦メディケア・メディケイドサービスセンター)など公的機関のデータをもとに、無保険者率・医療費の実態・日本との違いを整理します。
アメリカには日本の国民健康保険・社会保険のような全国民共通の公的医療保険がありません。65歳以上向けのメディケアや低所得者向けのメディケイドはありますが、現役世代の多くは勤務先が提供する民間保険(employer-sponsored insurance)に加入する仕組みです。転職・失業で保険を失うリスクが常にあり、個人で加入する保険は保険料がさらに高くなりがちです。
KFFの2025年調査では、雇用主提供プランの家族向け保険料は年間26,993ドル(前年比+6%)に達し、このうち労働者本人が平均6,850ドルを負担しています。さらに保険に入っていても、年間数千ドル規模の免責額(deductible)を自己負担してから保険が効き始めるプランが一般的で、「保険があるから安心」とは言い切れない構造です。
KFFの集計では、0〜64歳人口の無保険者率は2024年に9.8%(約2,670万人)となり、2019年以来初めて増加しました。主因はコロナ禍の特例措置終了に伴うメディケイド資格の見直し(アンワインディング)で、数百万人が対象から外れたことです。無保険者の8割超が低所得世帯に属し、85%は家族の誰かが就労しているにもかかわらず無保険という実態があります。
KFFの2024年データでは、無保険者率は年齢層・居住州によって大きな差があります。特にメディケイド拡大(ACA)を実施していない州は、実施州のほぼ2倍の無保険者率です。
| 区分 | 無保険者率 | 備考 |
|---|---|---|
| 19〜25歳 | 14.5% | 成人の中で最も高い層 |
| 26〜34歳 | 14.1% | 転職期・独立直後の層 |
| 子ども(0〜18歳) | 5.9% | 公的プログラムの対象が手厚い |
| 55〜64歳 | 7.4% | 成人の中で最も低い層 |
| 州・区分 | 無保険者率 | 備考 |
|---|---|---|
| テキサス州 | 19.2% | 全米最高水準。メディケイド未拡大州 |
| メディケイド未拡大州(平均) | 14.5% | 低所得者向け公的保険の対象が狭い |
| メディケイド拡大州(平均) | 8.0% | 未拡大州の約半分の水準 |
| マサチューセッツ州 | 3.3% | 全米最低水準 |
KFFの調査(2019年ベース)では、成人の約9%(約2,300万人)が医療費の未払い債務(medical debt)を抱え、総額は少なくとも195億ドルと推計されています。特に健康状態が悪い人では21%、障害のある人では15%が医療費の借金を抱えており、病気になること自体が家計リスクに直結する構造が、日本の高額療養費制度とは大きく異なる点です。
観光・短期出張は海外旅行保険、留学は大学指定の学生保険(多くの大学で加入が入学条件)、駐在は勤務先が用意する赴任者向け保険に、それぞれ必ず加入しておくことが欠かせません。アメリカでは保険証の提示なしに受診すると、公定価格のない「定価」で請求されるため、同じ処置でも保険加入者の何倍もの金額になることがあります。
保険に加入していても、免責額(deductible)・自己負担率(coinsurance)・ネットワーク外の病院を使った場合の追加費用など、仕組みが複雑です。渡航前に「緊急搬送・入院が実際いくらの自己負担で済むか」を保険会社や勤務先の人事担当に確認しておくと安心です。
生活費全体に占める医療保険料の重さについては州別の生活費比較ページ、手取りに影響する税負担については所得税ページ・最低賃金ページもあわせてご覧ください。
出典:KFF — Key Facts about the Uninsured Population/KFF 2025 Employer Health Benefits Survey/CMS — NHE Fact Sheet
日本には全国民が公的医療保険に加入する「国民皆保険」制度があり、窓口負担は原則3割(小学生未満・70〜74歳は2割、75歳以上は1割)です。さらに高額療養費制度により、1か月の医療費がどれだけ高額になっても自己負担には上限があります。標準的な所得層(年収約370万〜770万円)の場合、2026年8月の制度改正後で月額上限は85,800円+(医療費−286,000円)×1%です。つまり仮に1か月で医療費が数百万円かかっても、自己負担は十数万円程度に収まる計算になります。アメリカにはこの種の「自己負担の上限」を保証する全国一律の制度が存在しません。
| 項目 | アメリカ | 日本 |
|---|---|---|
| 国民皆保険 | なし | あり |
| 無保険者率 | 9.8%(約2,670万人) | ほぼ0% |
| 窓口負担割合 | 保険により様々(免責額・自己負担率あり) | 原則3割 |
| 自己負担の月額上限 | プランにより異なる・上限なしの場合も | 標準所得で85,800円程度〜(高額療養費制度) |
| 医療費のGDP比 | 18.0% | 約11%前後(参考値) |
出典:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み」/厚生労働省 高額療養費制度資料(2026年8月改正)
KFFの集計では2024年時点で64歳以下人口の9.8%、約2,670万人が無保険です。2019年以来初めての増加で、メディケイドの資格見直し(コロナ特例の終了)が主因とされています。
国民皆保険がなく、多くの人が雇用主経由の民間保険に加入する仕組みのため、価格交渉力が分散し医療機関・製薬会社の価格設定が高止まりしやすい構造があります。CMSによると2024年の全米医療費総額は5.3兆ドル、1人当たり15,474ドルに達しています。
観光・短期渡航は海外旅行保険、留学は大学指定の学生保険、駐在は企業の赴任者向け保険に必ず加入することが重要です。無保険のままアメリカで救急搬送や入院をすると、請求額が数百万円規模になるケースが報告されています。